「デモクラティア」感想

マンガワンで読める対象になっていたので1話を読んだところ面白そうな設定だったため、直ちに漫画喫茶にいって全巻(全5巻とてごろ)読みました。

若干のネタバレがあります。

ロボットを作成して、ロボットが人を殺そうとする系のSFチックな漫画です。

ただしロボットの行動を制御するのは、AIではなく人間。

顔の見えない多数決参加者が多数決(+α)でロボットの行動を決定していきます。

この根本には「多数決で決まった行動をしていけば理想の人間としてのふるまいができる」というコンセプトで作成されたロボットが、人間世界に混じって行動し、そこでいろいろなイベントが発生します。

結構リアルだなーって感じたのが、人間は論理だけでは生きていないということ。

このロボットは女性の姿をしています。
いままで「こうあるべき」と語っていた多数決参加者たちが、
このロボットが性的に襲われているのをみて、殺す命令を出してしまいます。

また、多数決参加者たちが建設的な話をしている途中に、その顔の見えない多数決参加者の中に外国人が混じっているとわかったとたん議論が一転。

きっかけとなった発言をした人は私怨ではあったものの、参加者はいわゆる右だ左だ人種差別だののプチ宗教論争に。
これもおおよそそのタイミングで抱えていた問題解決に対しては論理的な議論とは言えないでしょう。

また作中の登場人物(?)も語っていましたが、「デモクラフィア(多数決)は誰の責任も問われないって知ってるから、みんな参加してるくせに」
というセリフが出てきます。

これはその通りですね。
すぐ他責にできてしまいますし、失敗しても責任が薄まります。

うまく回っているときは多数決というのはよくできているシステムです。

最大多数が選んだという安心感を得ながら実行することができて、
採用案が成功したら、採用案を選ばなかった人も達成感を得ることができて、
当然採用案を選んだ人はより自信をもち、
プレゼンの時間があれば専門知識を持っている人の知識を使うことができる。

ただしうまくまわらなくなった場合、責任の所在があやふやになってしまうため、
ケツを拭く人がいなくなりがちです。

そして、採用案を選ばなかった人は「だからだめだって言ったじゃないか」
失敗した採用案を選んだ人は「自分だけじゃない、ほかの人もこれでいいって言った。きみもいいといったじゃないか」
となり、解決するための建設的な議論は生まれづらいです。

このことについてもうまく描いていたと思います。

はっとしたこともありました。
「多数決はあくまでも今すぐ決めなきゃならないことをとりあえず決めるための手段に過ぎない。
だから自分たちが決定したことに自分たち自身が縛られる必要なんてないんだよ。
状況が変わればまた意見を変えてもいい。みんなで何度も議論しなおす、その過程こそが大切なんだ」
というセリフ。

この状況が変われば決定事項も変わっていいという話。
この漫画で使われたシーンとしてはいいセリフだと思いました。

確かにと思う一方で、やっぱり決めたことをころころ変えてしまってはPDCAのPばかりでDがなく何も進まなくなってしまいます。

このあたりのバランス感覚については多数決だけでなく、リーダーであったり、ファシリテーターであったりという存在はやっぱり必要なんだなと思わざるを得ません。

その役に付くのが今では人間ですが、将来的にはAIとかになったりするんですかね。

その場その場限りの判断ということについてはコンピュータのほうが強そうです。
コンピュータ将棋は200手先を読むのではなく、点数をつけその場での最善手を指し続けるということも聞いたことがあります。

結構多数決はコンピュータ向けなのかもしれないですね。
それこそエヴァのMAGIみたいに。

ちょっと人間ドラマの比率が大きく、正直若干演出(いいセリフ言っている感)が鼻についたりもしますが、
全体としてはいいストーリーだと思います。

全5巻とそこまで長くないので、読んでみてはいかがでしょうか

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